コロナ後の世界は… その2 ― 住まいはいのちの砦(とりで)-

 

「新・自由主義」という名の怪物が世界を覆った結果、人も暮らしも「不自由」を強いられるようになったと、前回のブログで申しましたが、コロナ禍の直撃を受けたのが、「非正規」の不安定労働者です。

 

「競争」に勝つことを至上命令とし、負けるのは「自己責任」つまり、自分が悪いのだ、と思わせる、って実に卑怯なやり方だと思っています。

民間の労働者派遣事業が解禁されたのは、そう昔のことじゃありません。

のような法律が通ったとき、わたしは驚いたんですね。

 

だって、「派遣会社」って、要するに、昔の「口入れ」「手配師」のことですよ。

労働者を集めて、いろんな会社に手配したり、紹介したりして、その手数料を、労賃からピンハネする仕事のことです。一万円の日給なら、3000円を取る、って具合にね。戦争前は、そういうのがあったんです。

 

でも、戦後、あたらしい憲法のもと、1947年の「職業安定法」で「何人(なんびと)も、有料の職業紹介事業を行つてはならない」と、なったんです。

労働基準法でも、中間搾取、いわゆるピンハネは、禁じられていた。

ですから、職業紹介事業は、公的機関の「職業安定所(職安)・ハローワーク」がおこなっていたんですね。

 

ところが、国は、民間の労働者派遣事業を認めることにした。

経済界のつよい要求があったんですね。

最初の「労働者派遣法」が施行されたのは1986年。

そのときは派遣労働の対象は、秘書とか、専門性の高い仕事に限定されていた。でも、その後改定につぐ改定で、製造業まで、ほぼすべての業種で派遣が認められることになってしまった。

 

その結果、今や、非正規労働は、全労働者の4割ちかくにまで増えてしまっています。結局、労働者派遣法は、企業の都合で「自由に」労働者の首を切ることができるようにするためのものだったということですよ。

 

正規雇用を望んでいるのに、非正規雇用しかない、というのは、人権問題に直結します。つまり、正規労働者と同じ仕事をしている。毎日働いている。だのに、いつ首を切られるかわからない。

これは、生存の不安です。

 

その上、正規雇用に比べて、賃金は正規労働者の半分以下。ボーナスもなく、いろんな手当もない。だから、結婚もできない。

 

大事なのが、人間としての「誇り」です。

正規労働者と同じ仕事を一生懸命していても、認められない。

ひどい所になると、人間扱いされない。名前じゃなく、「おい、ハケン」などと呼ばれる。となると、人権問題でなくて、なんでしょう。

 

さらに、公務員の非正規職員の問題もあります。

「官製ワーキング・プア」とも言われますよね。

教員や保育士、図書館員、看護士、各種相談員まで、全体の5分の一が非正規職員になってしまっています。なんということでしょう。

あるいは、役所や公民館の清掃とか、必要な公的業務が民間委託されている。民間で働く人も、もちろん非正規雇用ですよ。

 

わたしも、むかし2年間、非正規で働いていたことがありました。

そのときの契約は6か月。ところが、3か月たったとき、一日だけ雇用が切られた。よく覚えていますが、12月1日でした。でも、その日も仕事はありますから、勤務している。だのに、その一日だけ、ただ働きにされた。

それは、勤務期間を3か月以内にするため。そうすると、ボーナスを出さなくてよかったりするのです。なんとも理不尽な話じゃないですか。

 

わたしの場合は、正規の組合の人ががんばってくださって、少しばかりボーナスが出たかと思います。

でも、50年後の今も、ずっと働いているのに、細切れ採用の形にされている労働者があるようすです。賃金を値切るためなんですね。

 

今回のコロナ禍で、非正規労働者が失業して、家賃が払えなくなった、という人たちが出ています。

いちばん大変なのは、住居つき非正規労働者。首を切られたとたん、住むところがなくなる。ただちに路上生活者になってしまうのです。

住まいこそ、いのちの砦。生きるための最低の条件の一つですよね。

 

コロナ禍で、ネットカフェ難民が出ましたね。

そもそも、ネットカフェを住まいにしなければならないこと自体、ひどいことだと思います。

わたしの友人が、ボランティアで、住まいのない人たちのために安い賃貸住居を提供する支援に関わっていますが、そこは、いつも満室だそうです。

 

コロナ後に必要な社会のあり方の一つが、

使い捨ての非正規雇用が横行する社会を変えること。

そして、安い賃貸公共住宅が整備されること。

 

憲法25条が、それを、わたしたちの権利として、保障しています。

「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

国は、すべての生活部面について、社会福祉社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」 

国の責務なんですね!