チャップリンの『殺人狂時代』とコロナ危機

 コロナで暇になったので、テレビでときどき映画を見られるのが、うれしい。

 この山里では、山が電波を邪魔しているようで、テレビは、BSしか映らない。わたしが見るのは、主にドキュメントと映画。NHKBS1の朝の世界のニュースは、各国の現時点での様子を見られるので、とてもおもしろい。

 

 この一ヶ月ほどの間に見た、わたくし的?いい映画の第一位は、チャップリンの『殺人狂時代』と、是枝裕和監督の『誰も知らない』。

 毎週土曜日は「寅さん」。民報で『男はつらいよ』も毎週みています。何度見ても見飽きない。何しろ50作もありますからね。家族中が寅さんのファンです。

 

さて、チャップリンの『殺人狂時代』(1947年)。

チャップリン扮する主人公が、長年の間実直に銀行勤めをしていたのに、世界的な不況でとつぜんクビになってしまう。彼には、足が悪くて車いすの、でも美しくてやさしい妻と10歳くらいの子どもがいる。彼が家族のために始めた苦肉の「商売」が、お金持ちの婦人をだまして、愛人になり、果ては殺して、財産を奪うこと。

でも、やはり悪事がばれて、死刑台におくられることになるのです。

 

死ぬ前に最後に主人公がつぶやくのは、おれの殺人は「ビジネス」だったが、「戦争もビジネスだ」ということばでした。さらにこうつぶやきます。

「一人を殺せば、犯罪になるが、100万人殺せば、英雄になる」

わたしが、誰かが殺人の罪で死刑の判決が下されるたびに、思いだすことばです。

戦争がなくては困る産業がある。しくみがある。そんな、ビジネスのために世界が混迷に陥っている一面をみなければならないと思うのです。

 

日本も、朝鮮戦争(1950-1953年)、ベトナム戦争(本格的には1965年-1975年)による特需で、経済を復活させたり、活性化させたりしました。

朝鮮戦争のときは、わたしは10歳くらいでした。そのころ、子どもの間で、鉄くず拾いが、はやったのね。今にして思えば、爆弾をつくるために、「鉄」の需要が盛んだったからでしょう。 

 

第二次大戦中、日本は、全国の主要都市が空爆され、最後に原爆を落とされて、ほとんど壊滅状態になりました。でも一方、朝鮮戦争のとき朝鮮全土に落とされた爆弾は、日本に落とされた爆弾より多かったとか!死者も、日本の戦死者数より多い、350万人とも400万人ともいわれます。そう知った時は、ショックでした。

 

1945年に原爆をおとされたあと、日本政府はやっと連合国の敗戦の勧告を受け入れましたが、戦後、日本は、あたらしい憲法を制定して「平和」を国是とすることになりました(1947年5月3日)。

けれども、アメリカに軍事占領されていた日本が独立(1952年)した後も、沖縄だけは、1972年まで、27年間もアメリカの軍事占領下に置かれつづけました。

さらに、沖縄は、朝鮮戦争ベトナム戦争のための、米軍の発進基地、補給基地になった。沖縄の米軍基地には、核兵器までおかれていたのです。

 

他国を犠牲にする経済復興とか、経済成長って、なんなのか…。

 

さて、コロナは、国境を越えて、まんべんなく世界中の人々を襲います。だから、人類の共通の敵に対して、世界各国は、協力、協調しなければならなくなった。世界中で人々が行き交っている時代に、戦争している場合ではない、ということをコロナ禍は私たちに教えていると言えましょう。

けれども、アメリカも日本も、いまだにコロナ対策よりも、いかに軍事力を高めるかということばかり、考えているように思える。それが、コロナ対策が遅れた理由でもある、と思うのです。

 

アメリカは、小型核兵器の開発に余念がなく、安倍政権も、アメリカの要請にこたえて、敵基地攻撃の能力のある戦闘機を爆買い(147機)するなどして、軍事力のアップにまい進しています。

どんなに地元の反対があっても、沖縄に、米軍のための新基地(辺野古)をつくることに固執し、陸上イージス(イージス アショア)を、秋田県山口県に置こうとしている。これらのためには、お金はジャブジャブ使われるのです。

 

イージスアショアって、地上に設置した高性能レーダーで敵のミサイルを捉え、迎撃ミサイルで撃ち落とすシステム。ミサイルは20基以上配備だとか。巨大な軍事要塞です。安倍政権のアメリカの兵器の爆買い総額は、約7兆1480億円に達するんですって!

 

ところで、コロナ対策で世界をリードしている韓国は、コロナ対策にまわすために軍事費を削った。すごいニュースでした。

「不用不急」の戦闘機より、現在の危機に対してお金をまわすことは、ふつうなら当たり前のことじゃないですか。先だっての韓国の国政選挙(4月)で、文在寅(ムンジェイン)大統領の与党が圧倒的な支持を得たのも当然ですね。

 

軍隊を持たないコスタリカも、感染抑止に成功していると報道されました。軍事費がない分、教育や保健分野に多くの予算を費やしてきた国です。

コスタリカは1946年に、軍隊を廃止してから、他国に侵略されたことがないのです。逆に、戦争が起こらないように、国と国との仲介役を買って出て、平和を輸出しています。

地球幸福度の世界一は、コスタリカだそうですね。

 

安倍政権のねらいは、憲法を変えて、日本を戦争ができる国にすること。そのことしか頭にないように見えます。

だから、こんなバーバでも、平和のために、いろいろやらねばならないという気持ちになるわけね。バーバたち亡き後にも、平和な世界を残したい、の一念ですね。