映画『老人と海』― 人は死ぬまで格闘する

先日、映画『老人と海』を、NHKBSで見ました。前にも書きましたが、わが家は、山の陰になって電波がとどかないらしくて、地上波テレビは映りません。BSだけは映るので、たまにいい映画があるときは、見逃さないようにしていますが、これも、暇があるからー。ヒマってほんとにいいですねえ。

 なんてことが言えるのも、年金暮らしで、コロナの影響を経済的にはあまり受けていないからなんですけどね。(そもそも懐具合は、いつも超寂しい!)

 

でもね、来月で80歳になるんですよ! すごいでしょ。

長生きしてる方が多いから、別にすごくないんですけど、自分にとっては、すごいことなんですよ。だって、80歳になるの、はじめてですからね!?

でも、なんでコロナでヒマって言わなきゃならないかって言うと、日ごろ、歳に似あわない、多忙な日々を送ってるからなんです。

 

民宿のこともありますし、もうひとつは、平和のための市民活動でいそがしいんです。やれやれ。なんで年寄りがって、思いますけどね、それはね、憲法を変えるって、息巻いている人が、わが国の首相だからなんですよ。「積極的平和主義」なんて言葉がこの方の口からとびだしますと、ええっ!?となります。

だまされちゃいけません。この方が首相になってから、ものすごく日本が剣呑になってまいりました。「剣呑」って「けんのん」って読みます。あぶない、っていう意味ですわ。

 

数日前に、「敵基地攻撃能力」を持たなきゃいかんぜ、とおっしゃって、びっくりいたしましたわ。

つまりですね、ミサイルとかで、敵の基地を叩く、そういう軍事力が必要だぜ、とおっしゃったんですね。それって、攻撃される前に、こちらから先に敵を叩く、ってことですから、要するに戦争を始める、ってことじゃないですか! 

これが、首相の言う「積極的平和主義」の中身。

 

「自衛」のためなら、「核兵器」持ってもいいと思ってらっしゃることは、間違いないでしょう。自民党の持論ですしね。

そして首相は、戦争はしちゃいけないよと定められた憲法9条を、どうしても変えるんだ、来年はそのための国民投票をする、と頑固におっしゃってます。

最近の世論調査では、7割の人が憲法9条を変えることに反対してるのに…。

かように、どんどん戦争する国にもっていかれそうで、そうはさせまいと、気張らざるを得なくなっちゃって、忙しくなったというわけだったんです。

 それなら、コロナでヒマなんて、喜んでいちゃいけないのかもしれないんですけどね、まあ、もう80歳ですからね、青息吐息、つまりヒーヒーなもんですから、ヒマになってうれしかったんですね。

 

 お、やっと映画の話にもどります。映画の話をいろいろしたいんですけどね、きょうは、一番最近に見た『老人と海』(1958年)だけになりますね。 

これは、アメリカの作家フェミングウェイの作品をもとにした有名な映画ですよね。小説のほうは、昔読んで、特に面白いとは思わなかったんですが、この映画はとてもおもしろかったですね。

 

   漁師の老人が主人公。妻も死んで、不漁つづきで、食うや食わずの、極貧の一人暮らし。舞台はメキシコ。老人のまわりには、老人ほどではなくても、貧しい漁師達が住んでいて、老人は、そこに住んでいる10歳くらいの少年と仲良しなんですね。「老人と少年」と言っていいような、作品です。

老人は、長年の労働で鍛え抜かれた屈強な体とすぐれた漁の腕前を持っているのですが、今ではすっかり老いてしまっています。それでも、漁師としての誇りだけは持ち続けているんです。

 

  ある日、いっしょに行きたいとせがむ少年をおいて、老人は一人漁に出かけます。沖合で出会ったのが、見たこともない巨大なカジキマグロ。船、と言っても手漕ぎの小さな船ですが、ともかく船よりでかいのです。

  映画は、老人が、この巨大な魚と格闘する様を、見事な映像で見せてくれます。巨大な魚は、釣り針がひっかかったまま、なかなか降参しません。カジキと老人の、死に物狂いの闘いが、何日も続くのです。老人は眠ることもできません。

 

 老人の仕事は魚をとること、殺すことなんです。でも、老人は魚たちに敬意と愛着も持っているんですね。格闘している相手のカジキを、仲間のように思ったりするのです。

でも、ついに弱って死んだカジキを船の横につないで、帰ろうとするのですが、血の匂いを嗅ぎつけた無数のサメたちが、カジキを食いにやって来ます。老人は、今度はサメどもと闘わなくてはなりません。

サメたちと闘いぬいたあげく、骨だけになった巨大な魚を供にして、やっとのことで老人は帰港します。

 

「みたこともないほどの大きなカジキだ」と村人の讃嘆の声が聞こえてきますが、何しろ骨だけです。老人には何の収穫もないと同じです。

疲れ果てて眠っている老人を少年が訪ねます。食べ物と飲み物を持って。少年の目には老人は英雄です。

しかし、この英雄は、自分の手柄を誇ることもなく、たんたんとしています。

人は、死ぬまで格闘する、自分のありったけの力を注いでー。そんな老人の姿は、わたしたちの心を打ち、そして、励ましてくれるようです。

偉大な海―自然とともに生きることの美しさも、伝わってきます。